ワープロ各社の状況
シャープ
ワープロとして最初にビジネスショウに出たのは、1977年春で、シャープの参考出品でした。
これはカナ漢字変換方式で、ドットプリンタとインクジエットプリンタを展示しました。
シャープ日本語ワードプロセッサ77'.5.28 m.sの日付が
入っています。
インクジェットの印字サンプルと仕様
ドットプリンタの印字サンプル
当日のアンケートです。
内容はなかなか興味深いものです。
シャープは1979年秋にペンタッチ入力のワープロを商品化することになります。
参考出品はカナ漢字変換だったのが、商品化ではペンタッチになったというのが興味深いことです。
東芝
ワープロを最初に商品化したのは東芝のJW-10です。発表は1978年9月26日です。
発表を伝える日経新聞1978年9月27日付け630万円とあります。
出荷は来年2月からとあります。
データショウでのカタログです。
東芝日本語ワードプロセッサJW-10表紙です。
この写真のように大きなデスクの形をしています。この機械は当時オフコンというカテゴリの事務用小型計算機が広くつかわれていましたが、オフコンの上にワープロを載せたといわれています。
カタログその1
「裏庭には二羽、庭には二羽鶏がいる。」といったカナ漢字変換が出来る機械だとあります。
カタログその2
仮名漢字自動変換ができるとあります。
カタログその3
訂正 挿入 削除 枠空けなどができます。
カタログその4
仕様があります。
変換単語は80,000語まで、 本体にハードディスクをもっている。辞書はハードディスクに収容。
文書は200頁を本体に、フロッピには60頁入る。40文字×40行/頁
表示装置 12インチ 24ドット表示 32文字×14行(448文字)
プリンタ ワイヤドット 24ドット
カタログ・キーボード部分の拡大です。
右上にトグルスイッチがあり、左が「文節指定」「漢字指定」の切り換え、右が「一括選択」「逐次選択」の切り換えになっています。
入力モード 文節指定モードは 文節の区切りで、文節キーを押します。 漢字指定モードでは、漢字キーと平かなキーを使って、漢字と平かなを分けて入力してゆきます。
同音語選択モード 逐次選択モードは、入力してゆくにしたがって、かな漢字変換が行われてゆくモードです。一括選択モードは、一度にかなを入力しておき、範囲を指定して、一度にかな漢字変換を行うモードです。
印字サンプル
東芝の独特のフオントが使われています。このフオントは後まで永く使われ、一見して東芝の機械で印刷したものだということが分かりました。
縦書きに印刷したサンプルです。
この機械は、東芝における「かな漢字変換」の研究から生まれたものです。
「かな漢字変換」の研究は、古くは昭和30年代からおこなわれました。
当時は、カナをなんらかのかな入力装置で入力しておいて、あとで、コンピュータを用いて、日本語の文章に正しく変換するというのがテーマ
でした。
この機械でもその色合いが強く残っています。
入力モードの文節指定にしても、漢字指定にしても、かな漢字変換のための区切り情報を入力するというものです。
今日は良い天気だったので公園に出かけました。という文章を入力するときには、
文節指定では きょうは〇よいてんきだったので〇こうえんに〇でかけました。〇
漢字指定では ●きょう〇は●よ〇い●てんき〇だったので●こうえん〇に●で〇かけました。
のように入力します。
入力は画面の下にある、入力ラインから行われます。下に入力してゆくと、変換された文章が上の方に少しずつ出てゆくというやり方を取っています。
このように、入力と変換とは別々に行われてゆきます。
同音語選択モードの逐次選択モードでは、
同音語選択を一つずつ順番にやってゆきます。
一括選択モードでは、同じ同音語は一度に選択できます。
入力された文章は、機械で自動的に変換されて画面に表示されます。しかし、機械では確定できないような同音語については、チカチカと点滅するようになっています。この同音語をあとで、正しいものに選択してゆく必要があるのです。
学会に発表された論文です。電気通信学会のコンピュータ専門委員会に発表されたもの。
計算機への日本語情報入力その1
その2
その3
その4
その5
その6
その7
その8
その9
この機械は試作モデルのようで、実際に出荷されるのは、ディスプレイが左側についてモデルになっていました。
価格は495万円になり、1980年夏ごろになると、JW-10モデル2となり、価格は340万円になりました。
これを実際に使ってテストをしてみましたが、
1.変換速度が遅く、辞書にないものが非常に遅い。
当時の記録では、「けんきゅうしょ」を変換させて、研究所とでるのに、24.4秒 「しようしょ」を変換させて、使用所とでるのに14.7秒かかっている。
2.変換率が低い 当時セールストークで90〜95%といっていたのは論外としても、感じとしては60%くらいであった。
3.変換の学習効果があまりない。辞書には頻度情報があり、この頻度情報をみて、単語を選択するようになっている。頻度情報は少しの使用では大きく変更されないから、学習効果が全然ないといった感じになる。後には改良されて、そのセッションではワークで辞書をもち、これを最初にみるというような方法に改良されたが、辞書は頻度情報で管理しているためうまくゆかない。
特に困ったのは、ユーザにデモをするときで、あらかじめ入力する文章を決めておき、その単語をともかく沢山入力して、頻度をあげておいて、デモにのぞむ必要があるときいていました。
4.あとで同音語の選択をするのだが、機械が勝手に漢字に確定している所もあり、この場合には修正がやたらと面倒だった。修正の入力には、かな漢字変換ができず、漢字を一文字ずつ入力する必要があった。
5.単語登録は文書作成中には行えず、別作業でディスクにある辞書をアップデートするため、45分程かかっていた。
6.頁スクロールしないとか、操作上の使いにくさが数々あった。
7.装置が大きく、オアシスはタクシーで運べるのにたいして、トラックでしか運べず、エレベータのないところでは搬入が大変だった。
当時OASYS100を発売していた我々は、あまりにも違い過ぎるので、発売は後発でも十分勝てると思いました。
NECのワープロ NWP-20 1980年5月6日発表
カタログ
機械がゴツゴツしていて、事務所で使うというより、従来からの端末イメージです。
入力はペンタッチ入力です。出力はレーザプリンタを使っています。価格は498万円。インパクトページプリンタ付のものは、425万円と値段も高めです。
カタログ裏
キャノン和文ワードプロセッサ(参考出品)
1980年ビジネスショウに出品されたもの。カナ漢字変換方式で、ローマ字入力もできます。
プリンタは熱転写式です。
カタログ1
カタログ2
カタログ3
カタログ4
各社の状況1980.5.8電波新聞
ペンタッチ入力
日電の他に、下記のメーカが出していました。
シャープ WD-300 295万円 79年9月20日発表
沖 レターメイト80 185万円 80年5月7日発表
ペンテル レタコン 200万円 89年5月発表
ツーストローク方式(連想式、ツータッチなどの呼び名がある)
リコー TX-620
ツータッチは漢字一文字をカナ2文字に割り当てておいて、カナ2文字を入力することによって、漢字を直接入力する方法です。
カナと漢字との対応に連想できるような割り当てをしたので、連想式ともいわれています。
川上晃さんがラインプットという呼び名で、1970年に発表し、日本語入力として実用的に使われていた方法です。
カナの入力の半分の速度で漢字が入力できるので、デモをみると驚嘆するような速度がでます。特に、カナ漢字変換では不得意な名刺(住所と氏名)の入力は抜群でした。
ただ問題点は、漢字とカナの対応を完全に覚えないとダメなため、オペレータの訓練に時間がかかることや、
和文タイプのように原稿を見ながら入力する使い方なので、文章創成には使えない。
キーボードで入力できる文字は、キーボードの組み合わせから2500〜3000文字くらいに限られるので、それ以外の漢字は別に入力しなければならない。
などの欠点がありました。
それなりに魅力のある方法なので、のちには日立もこの方式で、ワープロを作っていました。
多段シフト方式
新聞社などで使われていた入力方式で、ペンタッチのバリエーションともいえる。専門のオペレータが両手を使って
入力する。横河がこの方式でやっていました。
このように、1980年のころには、各種の入力方法のワープロが発売されましたが、3年程たったころには、カナ漢字変換しか残っていませんでした。
実際に使ってみて、ユーザがかな漢字変換を選択していったのです。